
2026年、第一線で活躍するドキュメンタリー映画作家の方々とともに、ろう者・難聴者向けの講座「ドキュメンタリーとは何かー企画から考えるドキュメンタリーを作る前の講座」を開催します。
この講座について
この講座は、ドキュメンタリー映画の「撮り方」ではなく、「なぜ撮るのか」を徹底的に考えることを出発点にしています。
きちんとした講義というよりも、雑談のようなリラックスした雰囲気の中で、講師・参加者がともに考え、語り合う時間を大切にしています。「企画通りに進められたらそれは失敗」という言葉があるように、現場で生まれたことを取り込み、その都度考えていくことこそがドキュメンタリーの本質でもあります。同時に、撮影に入る前に「なぜ撮るのか」を問い直し、表現方法や撮る側・撮られる側の関係性、そもそもドキュメンタリーとは何かを皆さんと共有する時間を設けることも、この講座の大きな目的です。
全10回の講座を通じて、ドキュメンタリーの基本的な考え方を理解し、自分自身の視点や問いを言語化し、最終的にドキュメンタリー企画書を完成させることを目指します。
この講座の特徴
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ろう者・難聴者を対象としています。
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撮影技術は扱いません。「何をどう撮るか」以前に「なぜ撮るのか」を徹底的に考えます。
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全国から参加できるよう、10回のうち5回はオンラインで実施します。
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第9・10回は2日連続開催。遠方の方には宿泊場所をご提供します。
受講期間:2026年7月19日(日)〜 2026年11月8日(日)10コマ
※各回時間が異なるため、ご留意ください。
※基本的に手話で進行します。聴者の講師には手話通訳がつきます。手話がわからないろう者・難聴者には文字情報がつきますので、前もってご相談ください。
※オンラインの回と対面の回があります。オンラインではパソコンからご参加いただきます。対面の会場は東京西日暮里5005を予定しています。
※想田和弘監督、小田香監督、今村彩子監督、牧原依里監督、それぞれの作品を事前にネット上で視聴いただきます。小田香監督作品『Underground アンダーグラウンド』に限っては音の振動を体感いただくために、8月7日夜にシネマ・チュプキ・タバタ(東京都北区)にて上映予定です。(参加推奨ですが遠方の方は任意です)
7月19日(日) 14時-17時 (3時間)
第1回|ドキュメンタリーとは何か 【対面@5005】
講師:加藤到
7月31日(金) 19時-21時30分 (2.5時間)
第2回|見ること・語ること【オンライン】
講師:加藤到
8月7日(金) 19時15分-21時15分 (1.5時間)
特別上映会 | 小田香監督作品『Underground アンダーグラウンド』上映会【対面 / シネマ・チュプキ・タバタ】※任意参加
8月9日(日) 14時-17時30分 (3.5時間)
第3回|作家と対話する① 【対面@5005】
講師:想田和弘・小田香
8月21日(金) 19時-21時30分 (2.5時間)
第4回|テーマの見つけ方【オンライン】
講師:加藤到・牧原依里
9月4日(金) 19時-21時30分 (2.5時間)
第5回|倫理と関係性【オンライン】
講師:飯山由貴
9月25日(金) 19時-21時30分 (2.5時間)
第6回|リサーチと方法【オンライン】
講師:飯山由貴
10月12日(祝・月) 14時-17時30分 (3.5時間)
第7回|作家と対話する②【対面@5005】
講師:今村彩子・牧原依里
10月23日(金) 19時-21時30分 (2.5時間)
第8回|構成を考える【オンライン】
講師:加藤到
11月7日(土) 14時-17時 (3時間)
第9回|企画書の書き方【対面@5005】
講師:加藤到・牧原依里
11月8日(日) 13時-16時 (3時間)
第10回|最終発表【対面@5005】
講師:加藤到・牧原依里
※講師の都合により講義日程や講師、内容に変更の可能性があります。ご了承の上お申込み下さい。
※第9回11月7日(土)・第10回 11月8日(日)は遠方の方に限り、11月7日分の宿泊先を提供します。対象となるかどうかにつきましては、当会の基準に基づき判断させていただきます。
聴者講師に加藤到氏・想田和弘氏・小田香氏・飯山由貴氏を迎えます。ろう者講師は今村彩子氏と牧原依里です。 ファシリテーターとして、加藤到氏と牧原依里が並走します。
国内外の映画祭・美術館で広く注目を集め、第一線で活躍するドキュメンタリー映画・映像作家の方々から、作品への向き合い方や映画づくりの心構えを直接聞ける、またとない機会です。

加藤 到
映像作家
東北芸術工科大学名誉教授、認定NPO法人山形国際ドキュメンタリー映画祭理事長。1958年、山形県鶴岡市出身。東京都立駒場高校時代から8ミリフィルムによる映画制作を始め、和光大学、イメージ・フォーラム映像研究所を経て、実験映画、ビデオアート、インスタレーション、パフォーマンス等、メディアアートを幅広く手掛ける。16ミリ短編映画「SPARKLING」は、ハンガリーで開催された映画祭「レティナ’91」で、シゲトヴァール市長賞を受賞。ユネスコ「創造都市ネットワーク」加盟を目指す山形市の申請活動を推進し、2017年映画部門で加盟認定を受ける。
ドキュメンタリー映画の企画書を制作するというのは、どうゆう行為でしょうか?一般的な劇映画ならば、原作のお話をどのようにシナリオ化して映像に移していくのかの道しるべを書き記すことと言えるかもしれませんが、必ずしもあらかじめストーリーが決まっているわけではないドキュメンタリー映画にとっては?と疑問に思う人も少なくないでしょう。
しかし実は、ドキュメンタリーこそ、企画書を作り上げることが重要なのです。企画がしっかりしていることによって撮影現場での偶発的なクリエイティビティ―が輝き出す瞬間が醍醐味です。そんな感覚が伝わるような機会になれば嬉しいと思っています。
ドキュメンタリーとフィクションの両方を制作してきた中で、私が最終的に求めているのは、そこから立ち現れる奇跡のような瞬間です。その日、その人たち、その空間、その瞬間の私だからこそ立ち上がる出来事があり、それを記録していく。その過程で、自分自身の視点や感覚を重ねながら、一本のレールとして作品を形づくっていく作業は、まさに偶然と意志が交差し続ける日々でもあります。
だからこそ、「自分は何を撮らずにはいられないのか」「何を追い続けてしまうのか」「何について考え続けずにはいられないのか」。そうした、自分の内側にある切実な情熱を見つけていくための手がかりを、皆さんと並走しながら一緒に探していけたらと思っています。
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Photo by 池田宏
牧原 依里
映画作家 / 演出家
映画『LISTEN リッスン』(2016)共同監督の他、『田中家』(2021)、『私は母の夢をみる』(2023)、レクチャーパフォーマンス「聴者を演じるということ 序論」(2023)、インスタレーション映像『三つの時間』(2025)、ろう者と聴者が遭遇する舞台作品「黙るな 動け 呼吸しろ」(2025)共同演出・構成など、作品形態は映像、パフォーマンス等と異なるが、その作品から生まれる現象を可視化する装置を提供することで、私たちの共通性と相違性を探り続けるとともにこの世界の社会構造を浮かび上がらせる試みを行なっている。2025年度(第76回)文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(芸術振興部門)受賞。
自らに課したルールである「観察映画の十戒」に基づいて映画を作っています。具体的には、予定調和や先入観を極力排すため、事前のリサーチや台本作りを行いません。テーマも定めず、よく観て、よく聴きながら、即興的にカメラを回します。そして編集中に試行錯誤を繰り返しながらテーマを発見し、映画を形作っていきます。ドキュメンタリー界では異端的な方法です。しかしなぜ僕があえてそのような方法論を取るのかについてお話しすることで、みなさんの制作活動の参考に少しでもなれば嬉しいです。

想田 和弘
映画作家
台本やナレーションを排した「観察映画」の方法論を実践。監督したドキュメンタリー作品に『選挙』『精神』『Peace』『演劇1』『演劇2』『港町』『精神0』『五香宮の猫』などあり、国際映画祭での受賞多数。93年から2020年までニューヨーク在住。現在岡山県の牛窓在住。ベルリン国際映画祭、アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭、釜山国際映画祭、香港国際映画祭など多数の映画祭で審査員を務めた。米国映画芸術科学アカデミー会員。
Photo by 木下繁貴

小田 香
映画作家
1987年大阪生まれ。フィルムメーカー/アーティスト。土地や人間に刻まれた不可視の歴史を手がかりに、集団的記憶へと接近する視聴覚的かつ映画的表現を探求している。ハンガリーの映画作家タル・ベーラが創設したfilm.factoryに参加。長編デビュー作『鉱 ARAGANE』(2015)が山形国際ドキュメンタリー映画祭特別賞を受賞。続く『セノーテ』(2020)、『GAMA』(2023)も国際的に高い評価を受ける。2020年に大島渚賞(第1回)、2021年に 芸術選奨文部科学大臣新人賞(映画部門)を受賞。日本各地の地下空間を16ミリフィルムで捉えた最新長編「Underground アンダーグラウンド」(2024)は、第75回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に選出された。
ある人間のこと、ある出来事のこと、ある感情のことを映画で記録するために、じぶんには何ができるだろうかと試行錯誤してきました。これまでの映画制作体験や実験を共有することで、みなさんがご自身の映画制作を手繰っていくための、ささやかな一助になれたら嬉しく思います。光、音、声、テキスト、身体、時間。映画を構成する様々な要素について、みなさんとセッションできたら幸いです。よろしくお願いいたします。

今村 彩子
映像作家/Studio AYA代表
名古屋出身。愛知教育大学卒業/カリフォルニア州立大学ノースリッジ校に留学し、映画制作を学ぶ。3歳の息子を育てながら、ドキュメンタリー映画制作や上映活動をしている。文章での発信もしており、中日新聞でコラム “『ものさし』を手放したら”を連載している。現在は、ろう・難聴の子ども向けの短編映画『どうする松本くん!』を制作中。主な映画は『珈琲とエンピツ』(2011)、『Start Line』(2016) フランクフルト日本映画専門映画祭ニッポンコネクション観客賞、 『友達やめた。』(2020)、 『きこえなかったあの日』(2021) 文化庁映画賞「文化記録映画部門」優秀賞、著書に「スタートラインに続く日々」桜山社(2019)がある。
わたしにとってドキュメンタリーは、自分はどのように生きたいかを考えるためのものです。壁にぶつかった時は、自分が抱えている問題にカメラを回します。撮ったものを見て編集することで客観的になり、どうしたらいいんだろうかと考えることができます。そうして生まれた作品を色んな人に観てもらいました。すると、自分が見えていなかったこと、気づいていなかったことを教えてくれる人もいて、映画の豊かさを感じています。だから、映画作りをやめることができません。講座では、わたしのこれまでの経験をお話しし、ドキュメンタリーにはどのような表現手段があるかを皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

